私たちについて

 現代、子育て支援の多くがサービスを提供することで子育ての不安や負担を軽減する方向に向かっています。しかし、一時的なサービスや癒しは得られるかもしれませんが、依然子育ての負担や責任は家庭の中に押し込められ、核家族化が進む中で親の孤立や不安感は拭えません。

 そんな現状の中、親たちがサービスや支援を受ける側だけの立場ではなく、自ら子育てについて考え、ともに学び支え合う場を生み出していく、そんな主体性を持った子育ての場を作っていくことはできないだろうかと考えました。
その第一歩として、自分たちの手で幼稚園をつくる試みをスタートし、2014年に和歌山に初めてのシュタイナー幼児教育を実践する「こども園ほしの子」を設立しました。今ここでは、0歳から7歳までの子どもと親が安心して子育てができる環境創りに取り組み、教師と親が支え合いながら共にこどもを育み、学んでいます。
私たちについて

 「こども園ほしの子」設立から3年、ここから卒園する子どもたちが現れ、小学校入学を前に、私たちは7歳からの子どもたちの教育についても自然と考え始めます。
シュタイナー教育では7歳から14歳までの時期の子どもたちは「感情」を通して知性を育む時期と言われています。
7歳から14歳までの子どもたちが感動を持って世界と出会っていく瞬間に、私たち大人は教師、親というそれぞれの立場で、どのように立ち会っていけばよいのか。
社会の変化を見据えつつ、教育内容と周囲の学ぶ環境はどのようなものがふさわしいのか。
めまぐるしく変化していく生活環境を意識しつつ、子どもの成長発達に沿った教育や環境を、一人ひとりの大人が考え、手元から共に創っていくことが必要なのではないか。
そして、創っていくことを目指す大人が子どもたちの側で働いている環境が必要なのではないか。
様々な議論の中で、私たちは現実と理想の間で子どもの環境を考えながら、自らの手で創ることを選択し、2017年4月、初等部の設立に踏切りました。

私たちは「こども園ほしの子」「初等部」設立運営を通して、共に協働することによって自分らしく働き、存在できることの喜びを感じるようになりました。それは、私たちが子どもたちに願っている人間像でもあり、このコミュニティが育んでいきたいと願うものでもあり、未来の社会においても、そのように存在して欲しいと思っています。 同時に子どもに導かれ、進むこの冒険は、大人の私たちがもう一度、感動を持って世界と出会い直し、新たな自分と出会い直し、手応えと信頼を持って未来を切り開く勇気を私たちに与えてくれています。
私たちについて
私たちがこの教育の場を創るにあたって、常に念頭に置いているのが、「地方におけるシュタイナー教育の実践」です。 都市人口のある地域が周辺にない地方において、生徒の人数や教師の確保は非常に難しい課題です。 現在、日本のシュタイナー教育は15年を超える実績を積み、全国のシュタイナー学校では素晴らしい授業実践が行われ、すでに多くの卒業生を輩出しています。また、UNESCO(国連教育文化科学機関)は国境を超えて人類社会の平和と福祉を築くという理念に基づいた教育を推進する為の先駆的な取り組みが期待できる学校を「ユネスコスクール」として認定しています。その取り組みの中で「持続可能な開発の為の教育」として現在3校のシュタイナー学校がユネスコスクールの認定を受け「日本におけるシュタイナー教育」は充実した時期を迎えています。そして今、この教育は「周辺への広がり」という新しいフェーズに入りつつあると私たちは考えています。 単式のクラス編成は人口の少ない地方のシュタイナー教育の現場での実現は困難を極めます。 資金的、人的な課題でカリキュラムもそのまま使えない場面もあります。 全日制の学校で最初からスタートすることは難しいかもしれません。 地方における、私たちの学園運営では、「この制限の中で目の前の子どもたちの為に何ができるのか」を常に問いながら教育実践が求められます。私たちはどのような場所でも、諦めずに考え抜き、子どもを教育していこうとする大人をできるだけ増やしていきたいと願っています。
私たちは、このわかやまシュタイナー学園の活動を通じて、目の前の子どもたちから学ぶことの中に、大人たちの共同体形成の先に子どもたちの未来があることを信じています。そしてこの場が、一人ひとりの大人が「自分で考える」ことを大切にし、また他者と共に考え、共に創造する喜びを分かち合えることのできる、一つの生きたコミュニティになることを願っています。
【2017年4月1日初等部開講に際した
趣意書より】
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